観光立国見聞録!中村好明オフィシャルブログ

中村の講演情報や哲学、思想、最近の活動や思う事について、徒然と綴らせていただきます。

インバウンド故郷紀行in唐津 〔後編〕

みなさん、こんにちは。

                                              

毎週水曜日更新の中村好明「観光立国見聞録」。

今週も、先週に引き続き、わがふるさと佐賀の唐津紀行をお届けします。

 

先週お知らせしたとおり、去る7月25日に、

佐賀県庁・唐津市役所主催の

「第三回おもてなしセミナー in からつ」が開催され、心躍らせて、私も登壇させていただきました。

 

会場となった300名を収容する大ホールには、たくさんのご来場者の皆さん。唐津市内だけではありません。佐賀県下各地から、熱心なオーディエンスの皆さんが大集結。

 

セミナーの最初には、イケメンの山口祥義(よしのり)佐賀県知事

ダンディな坂井俊之唐津市からのご挨拶。

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※写真は佐賀県山口知事

 

 

 

続いて、アレックス・カーさんの基調講演。

レックスさんの本は全部読んでいる大ファンの私にとっても、やはりその講演内容は新鮮でした。会場の皆さん誰もが真剣に聞き入っていました。

 

同氏は、1964年、2歳の時に、家族と共に来日、それ以来50年以上、日本に滞在。

 

私は、1963年生まれ。

 

私がものごごろのつく前から、アレックスさんは、日本を知っていらっしゃったわけです。

日本人にとっては当たり前のことが、外国人の目線で見ると、当たり前ではありません。

 

氾濫する観光地の各種看板が景観を台無しにしている現状、コンクリートの河川護岸工事が自然景観を台無しにしている様子などを、様々な事例を交えて、ビジュアルに説明され、とても説得力がありました。

 

高度経済成長の中で、日本各地の伝統的な景観がどんどん、壊され、古き良き村や町の風景が劣化した。観光立国時代には、その失われた景観を取り戻す努力が絶対的に必要なのだという主張は、心に沁みました。

 

また、アレックスさんは、単なる評論家ではありません。同氏は、すでに40年前。大学生の時に、四国祖谷渓の古民家を買い取り、蘇生させた人でもあります。庵(ちいおり)という古民家です。その紹介も詳しく講演の中でなされました。私は、なんとこの週のうちに、四国高知での別の講演があり、その足で、この篪庵を訪問しました。

 

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この空間そのものが芸術でした!

 

さて、この後は、私の基調講演。

 

そして、休憩をはさんで、いよいよ本日のメインディッシュであるシンポジウムの部。

 

レックスさんと唐津焼十四代中里太郎衛門さん、山崎信二唐津観光協会会長が、パネリストとしてご登壇。

 

私が、コーディネーターを務めさせていただきました。

 

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 唐津焼の窯元の中里さんのご発言で印象的だったのは、唐津焼を志す、若手の陶芸作家は、減るどころか、むしろ増えているという事実でした。年々全国からこの唐津を目指してくるとのこと。

 

全国の焼き物産地では、陶芸作家が減り、継承者不足が深刻だという話をよく聞きます。

唐津ではそうでない、ということは驚きでした。

 

 

山崎会長のコメントで私の心に刺さったのは、

 

「海の上からの唐津

 

という視点でした。

 

同氏は、ご本業の化粧品のお仕事で、フランスやイタリアの事業者との交流があり、

 

「先日、欧米のお取引先を招いた際に、クルーザーで、唐津呼子の海岸を巡るもてなしをした。すると、これが南仏ニースやモナコ以上の価値があると絶賛を受けた」

 

という話をされました。

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 ※写真は美味しい、呼子イカの活き造り。

 

 

なるほど、玄界灘には美味しい魚介類が豊富にあり、船上から釣り糸を垂れれば釣果は凄まじい。美しい白砂青松の海岸をはじめ、変化にとんだ海岸線。

 

これは聞いているだけでも楽しそう!

 

3氏とのディスカッションが白熱し、あっという間に時間切れ。

自分自身もっともっと、皆さんの発言を聞きたかったぐらいでした。

 

とてもとても、当日の濃い中身の全部はつたえきれません。

 

唐津のセミナーレポートは以上です。

私にとってもじつに心に残るセミナーでした。

 

佐賀県唐津市の皆さま、本当にお世話になりました!

(ふるさとは、やっぱりありがたい!)

                        

次回は、8月10日にお届けします。ご期待くださいませ!

 

 

インバウンド故郷紀行in 佐賀〔前編〕

みなさん、こんにちは。

毎週水曜日更新のブログ。

今回は、故郷紀行と題して、

九州佐賀の唐津への旅のレポートをします。

 

7月24日から27日まで、

わが故郷、

佐賀県庁と唐津市役所主催の、

 

「第三回おもてなしセミナーinからつ」

 

の基調講演とシンポジウムの

ファシリテーターを仰せつかり、

勇躍して、唐津に向かいました。

 

今回は、なんと初顔合わせとなる、

日本文化研究家、

レックス・カー氏とのコラボレーション。

 

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同氏は、たくさんの

日本文化・景観に関する著作

書いていらっしゃいます。

興味ある方は、↓アマゾンで!!

http://www.amazon.co.jp/%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%AB%E3%83%BC/e/B000APT3MG

 

もうずいぶん前から、

レックス・カーさんの

大ファンだった私にとって、

同氏とセミナーをご一緒できるのは、

至上の喜び。憧れの人と会う感じ!

 

わくわくドキドキ。

 

正直にいうと、どんなキャラの方か、

著作だけではわからないので、

お会いするまでは、

ちょっとナーバスになっていました。

 

ところが、セミナー当日の25日、朝、

 

「洋々閣(ようようかく)」という今回連泊した、

唐津の名旅館でワゴンに乗り組むところから、

すぐに打ち解けて、とっても気さくなお人柄。

著作は、かなりアグレッシブな内容なのに、

実際にお会いしてみると、

まるで少年のような澄んだ瞳の素敵な、

芸術と歴史をこよなく愛する文化人。

 

すぐに打ち解けることができました。

 

価値観を共有する人と過ごす時間は

かけがえのないものです!

 

 

「洋々閣」

http://www.yoyokaku.com/sub5.htm

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素晴らしいお宿です。

明治中期に創られたこの建物群自体がすでに、

重要文化財レベルの宿です。

インバウンドをすでに

何十年も前から受け入れてきた名旅館です。

唐津に行く際は、

ぜひお泊りいただきたいですね!

 

さて私たち二人は、

佐賀県庁と唐津市役所の方がたの

きめ細かいご調整のおかげで、

 

限られた午前中のうちに、

第14代中里太郎衛門さんの工房で絵付け体験、

 

そのあと、国指定重要文化財「旧高取邸」を視察。

 

石炭王の

高取(たかとり)伊好(これよし)さん

建てた大邸宅。

http://www.miyajima-soy.co.jp/kyoka/shaze15/shaze15.htm

 

明治時代に建てられたこのお屋敷は、

当時の最高峰の匠の技の結晶。

高取翁は、ご自身が能を舞うほどの文化人。

素晴らしい能舞台まで設えられていました。

 

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高取邸視察後は、

さらに唐津の名滝「見返りの滝」にまで

お連れいただきました。

 

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唐津は、歴史文化の集積に加え、

虹ノ松原やこの見返りの滝などの美しい自然、

呼子のイカの活き作りなど

枚挙にいとまがないほどの

素晴らしいコンテンツがあるものの、

まだまだ世界には知られていません。

 

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唐津城の夕景。

ため息が出るほど美しい!

 

いわんや、国内においてさえ、

まだ知らない方が多いのも事実です。

 

佐賀県人のはしくれとして、

佐賀の唐津の魅力発信に尽力したいと、

今回改めて決意しました!

 

 

さて、

今回の旅のメインディッシュである

「おもてなしセミナー」での

レックスさんをはじめ、

ご登壇された山口祥義(よしのり)佐賀県知事

坂井俊之唐津市長、

唐津焼十四代中里太郎衛門さん、

山崎信二唐津観光協会会長のお話しは、

次回じっくりご報告します。

 

 

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セミナー会場の楽屋にて。

談論風発、本当に楽しい“楽屋”となりました!

 

 

次回〔インバウンド故郷紀行in唐津後編〕は

8月3日水曜日にお届けします!

ご期待くださいませ!

〔後編へ〕

古民家ツーリズムin 新潟 第三回〔完結編〕

 

 

二泊三日の旅、最終日のお宿は

古民家の宿、欅苑(けやきえん)さん。

http://www.keyakien.com/top.shtml

 

JR上越線の「五日町駅」下車。

駅前はまったく何もない。

無人駅

駅舎も大きいし、

駅前の広場も大きいので、

昔はそれなりに栄えたんだろうな、

っていう風情でした。

 

仕事で全国の地方鉄道を旅すると、

このような無人駅が

最近思いのほかほど多いですね。

一部の自治体や地域のNPOとかでは、

こうした無人駅を活用した、

地元産品の土産物屋なども

やっていらっしゃるところもあるけれど、

こうした無人駅を活用するための、

公的な、基本支援メニューが

必要なのではないかと思いますね。

 

生活者ではない、観光客目線でみると、

無人駅はやはりそれなりに

観光気分を下げちゃうものだと、改めて思いました!

 

地域のインバウンド戦略

地方創生戦略としては、

この無人駅対策はけっこう重要だと思います。

(現状は、けっして鉄道会社さんだけの

 責任なのではなく、

 地域社会全体で無人駅対策を

 考えるべきだと思います!)

 

そして、

ビジネスチャンスの視点からすると、

同時にかなりもったいないかも!

 

!たとえば、

☆彡 駅カラオケ、

☆彡 駅カフェ、

☆彡 駅の農産物直売所、

☆彡 駅のゲストハウス、

☆彡 駅の地産地消レストラン、

☆彡 駅のシェアオフィス、

などなど。

 

活用方法は無限大だと思います。

そして、切符販売や駅舎維持を鉄道会社が

地域に委託すればいいのでは?

(駅の利用者だけをあてにするのではなく、

 地域コミュニティの核にしたり、

 新たな観光コンテンツにしたりとか・・・)

集客と個々の経営上の課題(コストと収益)は、

一つ一つ克服していかねばなりませんが・・・。

 

さて、五日駅から欅苑までは、

タクシーで10分ほど。

駅にタクシーは待機してくれていません。

そういうお話だったので、

事前に地元のタクシー会社に宿を通して

予約してもらっておきました。

 

駅前には、

すでにタクシーの運転手さんが待っていてくれて、

ほっ。嬉しかったですね。

タクシーに乗ると、あっという間にお宿に到着。

 

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チェックイン時に、

笑顔が素敵な宿の女将さんに

お話を聞いてみました。

 

「この家は、代々、

 庄屋を務めていた、地域の豪農でした。

 築150年のこの屋敷を、

 維持するためにはたくさんのお金がかかります。

 それで1987年に宿を開業したんです!」

とのこと。

 

そう。

何かにチャレンジしないと、

古民家は維持できないんですよね。

(特に冬は雪対策にお金がかかる。

 そして、かやぶきの屋根のメンテナンスにも

 莫大なお金がかかるんですね!)

 

メインは昼と夜のレストラン。

(かならず前日までに電話予約が必要)

宿泊はオプションという扱い。

 

料理は女将さんご自慢の田舎料理。

これが、

チョー本格的

味はもちろん、

地元の旬の野菜、

屋敷の敷地内の菜園でとれたものを、

一工夫して素敵な膳と器で出していただけます。

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1泊目の「里山十帖」とは、

ちょっと、贅沢の方向が違いました。

 

建物の内部は、新潟の豪農の家そのもの。

里山十帖」の本館も、もしかしたら

こうした豪邸を移築したのでしょうか。

 

木組みの美しい梁と柱は漆が塗られてぴかぴか。

それが囲炉裏の煙に燻されて渋い光沢が美しい。

 

庭には、樹齢1500年とも

見積もられている大欅の樹が。

まるで神木のように聳えていました。

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インバウンドのお客様もいらっしゃいますか?」

と給仕中の女将さんに尋ねたら、

「海外のお客様は来られませんね。

 案内もしていないし。」

 

「あら、そうですか。もったいない!

 

おそらく、欧米を始め、

世界のお金持ちがここにきたら

感動するだろうな。

と思いました。

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宿泊棟は、庭先のロッジ。

古民家には、当然客室はないので、

別棟。

 

質素なロッジ。

旅館というよりは、

昭和のしぶいビジネスホテル。 

 

これは、事前に女将さんから、

「古民家本館には泊まれないですよ!

 くれぐれも誤解のないように!」

という丁寧な説明がされていたので、

ノープロブレム。

 

 

ぐっすり眠った翌朝は、

再び本館の個室でゆっくり朝食。

これも女将さんの手料理。

上品で美味しい。

食事のあとは、

ロッジでしばしくつろぎ、チェックアウト。

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最終日は雨。

女将さんは、雨の中、

こちらからその姿が見えなくなるくらいまで、

外で見送ってくれました。

 

女将さんには、

おもてなしがもう自然と身についていて、

いぶし銀

過不足のないおもてなしとは

このようなものだろうと思いました。

 

このあとは、

酒造会社「八海山」の雪室がある

醸造所を訪問。

なんと、欅苑から

徒歩7~8分。

目と鼻の先。

 

ここで美味しい日本酒を利き酒。

美味い

スタッフさんの頑張りもとてもよくて、

八海山のファンになりました。

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昼は、タクシーで移動し、

地元の某レストランで

地ビールとピザをいただきました。

 

うーん、

こちらは料理の味も、

設備も、ホスピタリティもちょっと・・・。

けっこう期待してたんですけどね・・・。

 

個性的な建物は素晴らしく、

コンセプトもいいのに、・・・・。

うーん、もったいない。

 

観光は物語(ストーリー)なので、

ほかがどれほど素晴らしくても、

たった一つでも、

その地域のほかの部分に大きな不足があると、

その土地全体の旅の印象において、

マイナスとして響きかねないんですよね。

 

観光は、地域連携が重要だと、

改めて実感しました!

 

 

あっつ、そろそろ時間だ。

レストランから再びタクシーに乗って、

無人駅の「五日町駅」へ。

ほかの交通手段はなし。

 

駅に到着。

無人駅はやっぱりちょっと、わびしい。

 

在来線を長い間待って、

隣の新幹線停車駅「浦佐駅」に移動して、

一路東京へと戻り、

この二泊三日『古民家の旅』

無事終了しました!

 

古民家ツーリズムin新潟

 

あっという間の、プライベートな旅でしたが、

収穫は大きいものとなりました。

日本中に、朽ちかけている古民家物件が山のようにあります。

 

これらを活用して、

どういうふうに活かすか

 

古民家そのものも大事だけど・・・。

それよりも、

地域全体の暮らし、文化、

歴史、食、そしておもてなし。

地域連携、官民連携、

二次交通対策、SNSなどでの発信

などなど。

全部のハーモニーが大事

 

課題は山積していますね。

でも、同時に無限の可能性がある

今回改めて思いました。

 

来週は、新しい次のテーマでお届けします。

内容はまだ、ひ・み・つです。

 

乞う!ご期待!!

〔完結編おしまい〕

古民家ツーリズムin 新潟〔後編〕

 

 

1週間ぶりですね。

毎週水曜日に更新します。

 

 

さて、先週の前編では

往きの行程と1泊目の

里山十帖」での見聞を報告しましたが、

後編では、2日目の体験を

綴ってみたいと思います。

 

ところで、前泊の里山十帖」といえば

自遊人』という有名な雑誌社の

クリエイティブ・ディレクターである

岩佐さんという方が苦労されて創業した宿。

たしかに、

コンセプトのこだわりは半端ないです。

 

興味のある方はぜひ一度泊まってみてください。

ただし値段は、それなりにお高めです。

(ご覚悟を!)

http://www.satoyama-jujo.com/

 

 

さて、

2日目は大沢駅を後にして、

JRの六日町駅ほくほく線

(これが、びっくりするくらいの高速列車です)

に乗り換えて、

十日町市まつだい駅に下車。

ここで、ランチには

美味しい地元のそばをぺろり。

まずまずの味。

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このあと、地元で農家民宿を営む

若井明夫さんと待ち合わせして、

車に同乗させていただき、

まつだいの山間にある

4軒の古民家を探訪

若井さんは御年、72歳。

でも、お名前のとおり

若々しい少年のようなお人柄。

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4軒の古民家のうち3軒は、

空き家を若井さんが買い取って、

投資してリノベーションしたもの。

民宿を営むにあたり、

旅館業の免許を取るために

だいぶご苦労されたよう。

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「どういうところに苦労したんですか?」

「お風呂や洗面所、

   男女別の手洗い4か所など、

   不必要くらいの

   重装備が取得要件だったんです。

   ほんとのところ、

  古民家らしさを失いたくなかったけど

   仕方なく投資しました。

   実はそんなに過剰な設備は

  誰も求めていないんですけどね。」

 

「なるほど!」

 

廃れていく集落を守り、

空き家をなんとか保存しようとして、

民宿に取り組んでいるのに、

全国一律の法令のため、

過剰な投資残をかかえ、

ご苦労されている若井さんの話を聞いていて、

 

もしかして、

今回の民泊解禁の議論は、

こういう現実も加味して

議論すべきかもと痛感しました。

 

 

「なかなか、民宿だけではやっていけないので、

   この他、どぶろく納豆豆腐を製造して、

   販売しています!」

 

「へえー。」

 

凄いと思いました。

若井さんは

村の起業家(アントレプレナー)だったのです。

 

「50年ほど前、

   東京で何年かさまざまな仕事をしに出ました。

   修行ですね。

   当時は、村中全部かやぶきの古民家だった。

   村の暮らしは貧しく、

   都会の発展はめまぐるしかった。

   生活水準の格差が

   どんどん大きくなっていったんです。

   でも、私は農業が好きだった。

   村の生活が好きだったんですね。

   農業をやりながら、何かを身に着けないと、

   将来大好きなこの村で

   暮らせなくなるだろうと思って

   都会で知識を身に着けようとしたのです。」

 

建築士やそのほかの資格などを取って、

村に戻った若井さんは、

設計事務所やそのほかの仕事を掛け持ちながら、

農業を営み、十数年前に民宿業をスタート。

 

「村の中では当時も、

   今もそんなことをする人はいなかった。」

 

「なぜ、どぶろくの製造とか、

   豆腐とか、納豆、味噌まで

   製造するようになったんですか?」

 

「いやあ、私の小さいころ、

   村から街に出掛けることはまずなかった。

   全部自給自足。

   お酒(どぶろく)も、納豆も、豆腐も、味噌も

   全部自家製だった。

   囲炉裏を囲む暮らし。

   冬は3メートルを超える雪の中で暮らし、

   自然の中で手に入るものだけで

   暮らしていたんです。

 

   私が今やっていることは、

 昔の暮らしの中でやっていたことを

   そのまんま事業化しているだけですよ。

   そして、民宿事業を始めた理由は、

   村人が出ていく、

   その建物を残したかったこともあるけど、

   村ながらの私たちの暮らしを

  都会の人にも、

  共有してもらえたらいいな

   って思って始めたんですよ!」

 

全部が、自然体の若井さん。

発想がシンプル。

 

新潟県内では、

構造改革特区制度の規制緩和を活用して、

特定農業者

農家民宿や飲食店等を併せ営む農業者)による

濁酒(どぶろく)製造事業に取り組んでいる

市町村が増えているそうですが、

この 「どぶろく特区」の活用を考え、

国内第一号の免許を取得したのは、

何とこの若井さんだったんです。

 

へえー、ほんとに凄い人だったんですね

 

様々なここでは書ききれないほどのことを

いろいろ見せていただき、

どぶろくの製造途中の原酒もごちそうになり、

 

駅まで笑顔で見送っていただき、

あっという間のまつだいの滞在。

 

心に残る、いや心に沁みるひとときでした。

そして、たぶん、

若井さんの集落がそのまま

かやぶきのままだったら

まず間違いなく世界遺産だろうな

って、つくづく思いました。

 

まつだい駅からほくほく線

六日町駅にもどり、

さらにJR線に乗り換えて、

こんどは五日町駅という無人駅で下車。

この日の宿「欅苑(けやきえん)」

タクシーで向かいました。

 

あれっつ、やばい。

 

ほんとうは、

この宿のことも今週号で書こうと思っていたけど、

若井さんのことで、いっぱいになりました。

 

つづきは、

来週〔完結編〕で報告します。

 

引き続きよろしくお願いしますね!

古民家ツーリズムin 新潟〔前編〕

 

我が人生で、はじめてブログというものを始めます。

雑誌のコラムや著書では書ききれない、ちょっとした気づきや、感想を皆さんに肩の力を抜いて、毎週水曜日にお届けしていきたいと思っています。

 

観光立国の現場、インバウンドの現場、そして何気ない中村の日常を、これから皆さんに毎週水曜にお届けします。

 

 

 

 

 

先週末、実に久しぶりにプライベートな、“オフ旅”に出かけてきました。今回のテーマは、新潟の古民家と日本酒を味わう旅。古民家の宿だけを選んで二軒に、各一泊、合計二泊。

 

ふだんは仕事柄、日々これアジア各地と国内各地への業務出張ばかり。

 

たとえ、京都や飛騨高山や熊野古道など、名だたる観光地にでかけたとしても、出張中はやはり、どうしてもビジネス目線になってしまいがちです。

 

「もっとこうしたらいいのに!」とか、

「ここはこう改善すればもっとよくなるのに!」とか、

 

どうしてもゆったり楽しめない。

訪日客がいたら、おもわず彼らの活動もチェックしてしまいます。

 

私が連載している海外の旅雑誌の取材を兼ねていたりする場合には、写真の構図を考え、ショットチャンスを常に狙っていたりもします。

 

また、当然昼間は、業務中の身であるからには、お酒など飲めません。

 

ところが、今回のようなプライベートな旅は別だ。スーツも着る必要はありません。カジュアルな私服で、東京駅で新幹線に乗り込んだとたん、ビールをポテチとともに飲み始めました。

 

「あー、気持ちいい。そしてビールがうまい!」

オフの旅はやはり、いい。非日常。出張時は、しょせん日常。人間、やはりたまには非日常が必要なんだな。“旅人目線”ではなく、“旅人そのもの”になりきるのがいいのだ。

 

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つくづくそう、思いました。

 

 

 

さて、初日は、新幹線の「越後湯沢駅」で降りて、

しばし、駅ナカと駅マエを探索。

 

想定外、あっつ、失礼。駅ナカが意外なほど充実していました。

なんと地元のお酒が100種類以上、利き酒できるすごい設備がありました。

500円でコイン5枚もらえます。

自販機のようにこのコインを入れると、渡されたおちょこで、好きなお酒が飲めるんです。

別料金にはなりますが、キュウリが1本100円。

 

何十種類の塩と、味噌が無料で選べます。

美味しい酒を飲み比べ。うーん、ぜいたく。新潟が酒どころだとは認識していたが、これほどとは、びっくり。

 

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このあとは、JRの在来線に乗り換えて、「大沢」という鄙びた駅で下車。一泊目は、「里山十帖」という、ちょっと料金高めのラグジュアリーな古民家をベースにしたホテル。すでに送迎ワゴンが待機。優雅に宿に到着。

 

おそらく庄屋などの豪農の家を移築したのでしょう。風格と格式がある。客室は別棟となっており、快適なファシリティーが完備している。新潟(越後)を始め、豪雪地帯の民家の柱も梁もでかくて立派でした。宿のメインの建物は古い古民家そのもの。

 

なぜでしょうか?宿の方に聞いてみました。

 

「なにしろ、冬には雪が3メートルも積もるんです。やわな柱や梁では家が押しつぶされるんです。」

 

なるほど。たしかに、母屋の上を見上げれば、確かに素晴らしい木組みの構造が見えました。これだけでも一見の価値あり。

 

夕食は、地元産にこだわった料理のコースを堪能。料理とのマリアージュを考えた日本酒とワインが次から次に出てきました。

おお、すごい。

 

 

 

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ところで、この日のディナーのメインディッシュは何だったと思いますか?

それが、なんと、土鍋で炊いた“ご飯”だったのです。

肉でも魚でもなく、ご飯がメインディッシュ。

 

さすが、米どころ新潟。考え方がいい。

炊き立てのご飯を、よくかみしめて、味わいました。

 

たしかに、うまい!!

 

二日目の朝食は、豪華だけど、あっさり。まずまずの味。

 

 

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さて、初日の宿の満足度は、うーん、値段の割には、まずまずといったところ。

 

仕事柄、どうしても辛口になるなあ。古民家の活かし方、おもてなし(ホスピタリティ)レベルは、まだまだ課題あり、という感じですね。インバウンド対応レベル、うーん、やばいかも。

 

この日は、この後、宿の送迎ワゴンでJRの大沢駅に戻り、六日町駅に移動、ほくほく線に乗り換えて「まつだい駅」で下車。

 

地元の農家で、民宿を4軒営み、同時にどぶろくの免許を日本で初めて取得した若井さんという方に会うことに。

 

興味深い話をたくさん見聞しました。二泊目の宿も素敵な、そしてもっともっと本格的な古民家。

 

続きは、次回。お楽しみに。

 

どうか、今後ともよろしくお願いします。

 

〔後編に〕