観光立国見聞録!中村好明オフィシャルブログ

中村の講演情報や哲学、思想、最近の活動や思う事について、徒然と綴らせていただきます。

古民家ツーリズムin 新潟〔後編〕

 

 

1週間ぶりですね。

毎週水曜日に更新します。

 

 

さて、先週の前編では

往きの行程と1泊目の

里山十帖」での見聞を報告しましたが、

後編では、2日目の体験を

綴ってみたいと思います。

 

ところで、前泊の里山十帖」といえば

自遊人』という有名な雑誌社の

クリエイティブ・ディレクターである

岩佐さんという方が苦労されて創業した宿。

たしかに、

コンセプトのこだわりは半端ないです。

 

興味のある方はぜひ一度泊まってみてください。

ただし値段は、それなりにお高めです。

(ご覚悟を!)

http://www.satoyama-jujo.com/

 

 

さて、

2日目は大沢駅を後にして、

JRの六日町駅ほくほく線

(これが、びっくりするくらいの高速列車です)

に乗り換えて、

十日町市まつだい駅に下車。

ここで、ランチには

美味しい地元のそばをぺろり。

まずまずの味。

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このあと、地元で農家民宿を営む

若井明夫さんと待ち合わせして、

車に同乗させていただき、

まつだいの山間にある

4軒の古民家を探訪

若井さんは御年、72歳。

でも、お名前のとおり

若々しい少年のようなお人柄。

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4軒の古民家のうち3軒は、

空き家を若井さんが買い取って、

投資してリノベーションしたもの。

民宿を営むにあたり、

旅館業の免許を取るために

だいぶご苦労されたよう。

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「どういうところに苦労したんですか?」

「お風呂や洗面所、

   男女別の手洗い4か所など、

   不必要くらいの

   重装備が取得要件だったんです。

   ほんとのところ、

  古民家らしさを失いたくなかったけど

   仕方なく投資しました。

   実はそんなに過剰な設備は

  誰も求めていないんですけどね。」

 

「なるほど!」

 

廃れていく集落を守り、

空き家をなんとか保存しようとして、

民宿に取り組んでいるのに、

全国一律の法令のため、

過剰な投資残をかかえ、

ご苦労されている若井さんの話を聞いていて、

 

もしかして、

今回の民泊解禁の議論は、

こういう現実も加味して

議論すべきかもと痛感しました。

 

 

「なかなか、民宿だけではやっていけないので、

   この他、どぶろく納豆豆腐を製造して、

   販売しています!」

 

「へえー。」

 

凄いと思いました。

若井さんは

村の起業家(アントレプレナー)だったのです。

 

「50年ほど前、

   東京で何年かさまざまな仕事をしに出ました。

   修行ですね。

   当時は、村中全部かやぶきの古民家だった。

   村の暮らしは貧しく、

   都会の発展はめまぐるしかった。

   生活水準の格差が

   どんどん大きくなっていったんです。

   でも、私は農業が好きだった。

   村の生活が好きだったんですね。

   農業をやりながら、何かを身に着けないと、

   将来大好きなこの村で

   暮らせなくなるだろうと思って

   都会で知識を身に着けようとしたのです。」

 

建築士やそのほかの資格などを取って、

村に戻った若井さんは、

設計事務所やそのほかの仕事を掛け持ちながら、

農業を営み、十数年前に民宿業をスタート。

 

「村の中では当時も、

   今もそんなことをする人はいなかった。」

 

「なぜ、どぶろくの製造とか、

   豆腐とか、納豆、味噌まで

   製造するようになったんですか?」

 

「いやあ、私の小さいころ、

   村から街に出掛けることはまずなかった。

   全部自給自足。

   お酒(どぶろく)も、納豆も、豆腐も、味噌も

   全部自家製だった。

   囲炉裏を囲む暮らし。

   冬は3メートルを超える雪の中で暮らし、

   自然の中で手に入るものだけで

   暮らしていたんです。

 

   私が今やっていることは、

 昔の暮らしの中でやっていたことを

   そのまんま事業化しているだけですよ。

   そして、民宿事業を始めた理由は、

   村人が出ていく、

   その建物を残したかったこともあるけど、

   村ながらの私たちの暮らしを

  都会の人にも、

  共有してもらえたらいいな

   って思って始めたんですよ!」

 

全部が、自然体の若井さん。

発想がシンプル。

 

新潟県内では、

構造改革特区制度の規制緩和を活用して、

特定農業者

農家民宿や飲食店等を併せ営む農業者)による

濁酒(どぶろく)製造事業に取り組んでいる

市町村が増えているそうですが、

この 「どぶろく特区」の活用を考え、

国内第一号の免許を取得したのは、

何とこの若井さんだったんです。

 

へえー、ほんとに凄い人だったんですね

 

様々なここでは書ききれないほどのことを

いろいろ見せていただき、

どぶろくの製造途中の原酒もごちそうになり、

 

駅まで笑顔で見送っていただき、

あっという間のまつだいの滞在。

 

心に残る、いや心に沁みるひとときでした。

そして、たぶん、

若井さんの集落がそのまま

かやぶきのままだったら

まず間違いなく世界遺産だろうな

って、つくづく思いました。

 

まつだい駅からほくほく線

六日町駅にもどり、

さらにJR線に乗り換えて、

こんどは五日町駅という無人駅で下車。

この日の宿「欅苑(けやきえん)」

タクシーで向かいました。

 

あれっつ、やばい。

 

ほんとうは、

この宿のことも今週号で書こうと思っていたけど、

若井さんのことで、いっぱいになりました。

 

つづきは、

来週〔完結編〕で報告します。

 

引き続きよろしくお願いしますね!