四国旅日記(高知・徳島祖谷渓・香川直島) 〔後編〕
みなさん、こんにちは。
毎週水曜日更新の中村好明「観光立国見聞録」。
今週も、お盆休みの都合により、
本日木曜日の投稿になりました!恐縮です。
さて、先週予告したとおり今週は、
高知での講演の翌朝出向いた、
徳島祖谷渓(いやだに)紀行を
レポートします!
高知駅を後にして、
一路祖谷渓の玄関口、
「大歩危駅」まで特急でなんと1時間ちょっと。
思いがけずハイスピードなJR四国の特急。
あれよあれよという間に、
景色は、深い山の緑の中に。
なんと、降り立ったこの特急停車駅も、無人駅。
ところが、この駅には管理を受け持っている
地元のパワフルなおばちゃまが、常駐。
ガイドを兼ねていて、
欧米人にも英語で応対していました。
(洋画や海外ドラマをみて我流独学で英語を覚えたそうです。凄い。)
もはや、無人駅とはいえないかも。
駅に何だか不思議な活気がありました。
7/20に投稿した、
新潟の旅の報告の際に
皆さんに提案したことですが、
無人駅は、カフェなどの
何らかの付加価値をつけて有人化することで、
地域の交流広場になりえます。
複合施設化が無理でも、
こうした常駐のシルバー人材活用は
一つの先進事例となりうるのでは、と思いました。
さて、この大歩危駅で、
地元四国の友人と待ち合わせして、
最初は、この小便小僧の像を訪問。
なんと、峡谷に突き出た岩の突端に鎮座していました。
拍子抜けするほどの小さい像でしたが、
不思議な魅力がありました。
谷底まで200mの高さがあるそうです。
このスポットには、
定期観光バスまで立ち寄るのだそうです。
さて、この後はさっそく地元の美味しい昼食。
「そば処・祖谷 美人」で名物のそばと、
同じく名物のあめご(あゆよりちょっと大きい川魚)の定食をいただきました。
店内では、いい具合に川魚があぶられていました。
そして、渓谷を見下ろすテラスで楽しく友人たちと食事。
そばも、あめごも、ぺろり。ああ、美味しかった!!
食事のあとは、
かずら橋(国指定重要有形民俗文化財)。
これが、祖谷渓のメインディッシュ。
〔でも、我々にとっては、
アレックス・カーさんプロデュースの
篪庵(ちいおり)が
メインディッシュなので、ここは前菜。〕
頑丈なかずらは、まるでワイヤロープ。
シラクチカズラ(重さ約5トン)で作られたもので、
長さ45m・幅2m・水面上14mとのこと。
昔は祖谷渓谷地帯で
唯一の交通施設であったそうです。
なんと3年毎に架替えが行われているようです。
わたってみると、
ゆさゆさ揺れて、これが案外怖い。
こんな山奥にも訪日客がわんさかいらっしゃって、
ちょっとびっくり。
香港人の若い二人の男の子が
橋に寝そべって写真を撮っていました。
彼らをまたいで通ったら、
「どうぞ!」と日本語で、
笑顔で声をかけてきました。
みんな楽しそう。
かずら橋を渡った後は、今日のメイン。
アレックス・カーさんプロデュースの篪庵(ちいおり)。
さんざん狭い山道を道に迷いながら、現地に到着。
40年も前、まだ彼が学生だったころに購入した古民家。
よくこんな山里の古い家屋を買って、
手を入れようと思ったなあと、
まさに唖然とするくらい不便なところにありました。
小さな看板が
篪庵(ちいおり)の入り口に立ててありました。
ここからさらに数分、
谷を降りていったところに、
素敵な建物が建っていました。
事前に、案内をお願いしていたので、
隣接する管理施設(ちいおりトラスト)の
スタッフさんに、
丁寧に屋内をご案内・説明していただけました。
アレックスさんのこだわりが凝縮した空間でした。
本当はここに泊まりたかったのですが、
すでに予約でいっぱい。
宿泊客がチェックインされる前の時間に
見学させてもらったのです。
アレックスさんが初めて祖谷を訪れたのは
1971年の夏のことだったそうです。
その翌年の1972年秋、
アレックスさんは
四国中の数百軒の民家を訪れた後、
ここ釣井集落にある一件の空家を見つけ、
1973年6月に購入したのだそうです。
それが、まさに
篪庵(ちいおり)だったのです。
カーさんがフルートを吹くことから
「笛の家」という意味で名付けられたんだそうです。
彼が購入を決めたときには、
すでに空き家になって17年が過ぎていたそうです。
そして、築300年を超えていたのです。
その後、たくさん手を入れて、
今のようなまさに芸術的な空間へと
磨かれたわけなのだなと、
しばし感慨にふけりました。
まだ、日本中で、
古民家の価値を見出している人など
ほとんどいない時期です。
いまでこそ、
全国各地で古民家の宿が
ブームになってきていますが、
そのムーブメントの源流の一つになっているのが、
この篪庵(ちいおり)なわけです。
しばし、時を忘れて、
庵の内外の魅力に引き込まれました。
この後は、同じくアレックス・カーさんが、
この祖谷渓でプロデュースした
「雲外(うんがい)」
という古民家に泊まります。
この続きは、次週〔完結編〕でお届けします。
来週は、水曜日に更新します。
ご期待くださいませ。
〔完結編へ〕